京都市動物園で5月に生まれたツシマヤマネコの子ども2匹の映像です。繁殖が難しいため、九州以外での成功例は初めてになります。
ツシマヤマネコは国の天然記念物で、絶滅危惧種に指定されているため、全国各地の動物園などで繁殖が試みられています。
ツシマヤマネコとは、長崎県の対馬にだけ生息する珍しいヤマネコです。野生のツシマヤマネコは現在、70~100匹ほどしか確認されていません。
子どものツシマヤマネコを見られる機会は滅多にないので、貴重な映像をご覧ください!
ツシマヤマネコの子どもを初公開
天然記念物ツシマヤマネコの繁殖に成功した京都市動物園が、2017年10月11日から11月12日までの期間限定で、生まれた子どもを特別公開しています。
ツシマヤマネコの特別公開
こちらは公開初日に撮影されたツシマヤマネコの映像ですが、さっそく飼育舎前に人だかりができる人気になっています。見学に訪れた子どもたちもワクワクの様子です。
ツシマヤマネコのオスとメスの子
2017年5月11日に生まれたツシマヤマネコのオスとメスの子です。体長15センチほどで生まれましたが、人工飼育で体長約70センチくらいまでに成長しています。
名前はまだないでそうです。見た目は猫ですが、タマやハナの名前では似つかわしくないので、雄々しい感じのレオやリンなどのイメージでしょうか?
ツシマヤマネコと目が合った!
人間は見学しているつもりでも、ツシマヤマネコからも、しっかりと観察されています(笑) 生後5ヶ月の子どもですが、すでにヤマネコの風格が漂っていますね。
人間たちの賑わった声が聞こえている中にあっても、けっこう堂々としているように見えます。でも、まだ人に馴れていないので、葉っぱの陰に隠れてしまうことも多いそうです。
仲良く寄り添うツシマヤマネコの子
ツシマヤマネコの子が、仲良くずっと寄り添っています。左の子は落ち着きなくソワソワとしていますが、右の子はけっこうのんびりとしています。
日向ぼっこしている猫の表情そのものですね。性格の違いが出ているのでしょうか?
ツシマヤマネコは絶滅危惧種のため、二匹は繁殖のために別の施設に移る可能性があるそうです。引き離すのは可哀想な気もしますが、元気に育って子孫を増やしてほしいですね。
福岡市動物園のツシマヤマネコ
こちらは先に繁殖に成功している福岡市動物園のツシマヤマネコの子ども2匹です。メスの姉妹になります。
2014年4月11日に生まれて、8月20日に撮影された映像です。順調に成長して、体重は2kgを超えています。食欲旺盛で、おとなのツシマヤマネコ以上にエサを食べているそうです。
ヤマネコは飼育されても人馴れしないのか、終始カメラを威嚇しています。繁殖させたツシマヤマネコは、将来的には野性に戻す目的もあるので、このくらいの警戒心がないと野性では生きていけませんね。
ツシマヤマネコとは?
ツシマヤマネコは、南アジアから東南アジアに分布するベンガルヤマネコの亜種、アムールヤマネコの変種として位置づけられています。
日本には、そもそもヤマネコは2種類しか生息していないので、ヤマネコといえば、かつてはツシマヤマネコのことを指していました。
しかし、1965年にイリオモテヤマネコが発見されて大きな話題になったため、現在の知名度では、イリオモテヤマネコのほうが有名になっています。
素人には見分けが付きませんが、上の写真がツシマヤマネコ、下の写真がイリオモテヤマネコです。
天然記念物ツシマヤマネコの特徴
- 体長:50~60cm
- 体重:3~5kg
- 寿命:8~10年
- 生息数:70~110頭(2000年代前半~2010年代前半)
- 耳の裏に白色の斑点がある
ツシマヤマネコは体重が3~5kgなので、普通の猫と大きさは変わりませんね。もしも街で見かけたとしても、私たちには猫と区別が付かないのではないでしょうか?
天然記念物のため、一般人がペットにして飼ってはいけませんが、2013年に対馬市に住む男性が、自宅で飼っていたツシマヤマネコのメスの治療を対馬野生生物保護センターに要請し、飼育していたことが発覚しています。
男性は、怪我をしていたツシマヤマネコを15年ほど前に保護し、そのまま飼育したとのことで悪質性はないため、厳重注意に留まりました。
飼育されていたツシマヤマネコは、15歳から16歳と推定されています(男性の要請を受けて、同センター治療したものの9時間後に死亡。死因は老衰とされています)。
ツシマヤマネコの寿命は8~10年と考えられていたので、飼育は違法ではあるものの、これはこれで貴重な研究資料となっています。
イエネコとヤマネコの違い
▲こちらはイエネコ
日本国内に分布するネコ類は、イエネコを除けば、対馬のツシマヤマネコと、西表島のイリオモテヤマネコの2種のヤマネコのみなのだそうです。
日本の本土にいるのはイエネコ(野良猫を含む)のみで、ヤマネコはいないことになっています。
生物学的に言うと、ヤマネコは、ネコ科動物の中で野生ネコ類に分類され、イエネコとピューマを除くネコ亜科に属するものを指します。
但し、イエネコが野生化して、山などで暮らすようになったものを、日本では伝統的に山猫と呼ぶこともあります。このへんが、ややこしいですね。
例えば、宮沢賢治の作品に『注文の多い料理店』や『どんぐりと山猫』という作品に山猫が登場します。でも、厳密に言えばヤマネコではなく、野生化したイエネコになります。そもそも童話なので、こんなことを言うのは野暮ですが(笑)
日本でヤマネコと呼べるのは、ツシマヤマネコとイリオモテヤマネコだけであり、どちらも現在、100匹前後の生息数しか確認されていない国の天然記念物です。
種の保存が緊急の課題になっているので、福岡市動物園や京都市動物園でのツシマヤマネコの繁殖成功は、本当に喜ばしいことですね。
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